Q) よく高齢者の死因で「肺炎」が挙げられますが、死にいたるイメージのない病気です。高齢者の場合は肺炎にかかると通常とは違う症状があるのでしょうか。
A) 「肺炎」は細菌等の病原体が肺の中に侵入して炎症を起こすことで生じる感染性疾患で、通常はウイルスの上気道感染(いわゆる風邪)に引き続いて起こります。誰でもなりうる一般的な疾患であり入院を必要としない軽症の肺炎の場合は外来通院で十分に治癒が望めますが、中には入院治療を必要とし場合によっては集中治療室への入室も必要となる重症の肺炎も存在します。重症の場合は当然死亡率も高くなるわけですが、高齢者の場合は重症となりうる要因がいくつか存在します。そもそも高齢であるため、体力的に若い人に比べて劣っている点が挙げられます。次に年齢とともに糖尿病や心疾患などの肺炎の重症化に関与しうる疾患を有している人の割合も増えてきます。中には「脳梗塞」等によって嚥下機能が低下している場合もあり、食べ物や消化液を気道に「誤嚥」することによって引き起こされる「誤嚥性肺炎」は高齢者の死亡につながる代表的な肺炎です。また高齢者の場合一度肺炎に罹患すると身体機能が低下し回復に長期間要する場合も多く、肺炎を繰り返す要因ともなり得ます。このような事項が高齢者における肺炎の死亡率を高くする因子なのです。
(2019年12月25日 中日新聞市民南版「教えて!ドクター Q&A」掲載)