2025年09月28日

Q「最近「百日ぜき」という言葉を・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 最近「百日ぜき」という言葉を耳にしました。風邪や咳喘息とどう違うのでしょうか?受診の目安があれば教えてください。

A) まず「風邪」についてですが、通常は主にウイルスの感染による「のど」や「鼻腔」などの上気道の炎症のため「咳」「鼻水」「咽頭痛」などの症状がみられる急性疾患で、数日から一週間ほどでおさまってくることがほとんどです。一方で「百日ぜき」は「百日ぜき菌」という細菌による感染症です。病初期は風邪と大差のない症状ですが、咳のみがしつこく続き2ヶ月から3ヶ月と長引く場合もあります。治療にはマクロライド系の抗菌薬が選択されますが、疑ってPCR検査や抗体検査を実施しないと確定診断ができないこともあり、見過ごされる可能性のある疾患の一つではあります。また感染者の咳とともに排出されるしぶきに含まれる「飛沫」あるいは「飛沫核」によって、人から人に感染することも多いことから、家族全員の咳がながびいているという状況になる場合もあります。
 一方で「咳喘息」は感染症ではなくアレルギー疾患です。ただ「風邪」などの感染症をきっかけに咳がながびくことも多く、一定期間ながびくと自然に症状がおさまる場合もすくなくないため、正直症状のみでは「百日ぜき」と「咳喘息」ではまったく区別することができないといっていいでしょう。通常「咳喘息」の診断には、気道狭窄がなく気道過敏性が亢進していることを証明する必要があるため、「呼吸機能検査」や「気道過敏性試験」などの検査が必須です。咳が長引いている場合は自己判断せず呼吸器専門医の受診をお勧めします。


(2025年9月28日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2025年08月28日

Q『健康診断で肺サルコイドーシスの疑いがあると・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 健康診断で胸部レントゲンに影が見つかり、肺サルコイドーシスの疑いがあると言われました。この病気は肺にどのような影響を及ぼすのでしょうか?

A) 「サルコイドーシス」は原因不明の疾患で、厚生労働省から難病指定もされています。体のさまざまな部位、いろいろな臓器に「肉芽種」ができるのが特徴です。頻度が高いのは「肺」「皮膚」「眼」「心臓」ですが、「筋肉」「肝臓」「神経」などにもできる可能性があります。
 「肺」については、肺門部のリンパ節が肉芽腫性変化にともなって腫脹し、レントゲン上「両側肺門部リンパ節腫脹(BHL)」として発見されることが比較的多いとされています。通常リンパ節の腫脹だけでは無症状ですが、肺野に小結節や線維化の所見がみられる場合もあり、肺野の異常をともなう場合は病変の広がりによっては咳や息切れなどの症状をともなう事もあります。ただサルコイドーシスの病変は部位や大きさなどは人によって大きく差があるため、この症状があるからサルコイドーシスを疑うというようなことは通常ありません。
 サルコイドーシスは無症状だったり、症状があっても軽微な場合も多いことから、特に治療対象とならず無治療経過観察となることも少なくありません。また6割ほどの方は経過観察中に自然によくなるともいわれています。ただし中には症状が強く生活に支障をきたしたり、生命をおびやかすような状況となる可能性があると考えられる場合もあり、そのような時はステロイド剤による治療を行います。
 いずれにしてもまずは確定診断が重要です。診断にはCTや気管支鏡検査、ガリウムシンチ、心電図などの様々な検査が必要です。検査機器のそろっている病院の呼吸器専門医を受診することをおすすめいたします。


(2025年8月28日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2025年07月29日

Q「かぜをひき、熱は下がったのですがたんが出るようになりました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) かぜをひき、熱は下がったのですが、黄色または緑色のたんが出るようになりました。病院へ行ったほうがいいですか。

A) 「かぜ症候群」いわゆる「かぜ」とは、鼻腔から咽頭までの上気道において、なんらかの病原体によってひきおこされる急性の炎症による症状を呈する疾患をさします。一般的にはその病原体の9割近くがウイルスと考えられており、ウイルスに対しての「抗ウイルス薬」を必要とせず、症状をおさえる「対症療法」で完治が期待できます。一部はウイルスではなく細菌であるとも考えられていますが、通常は対症療法で治癒が期待できる場合がほとんどです。またウイルス感染では痰がでることは少ないと考えられていますが、細菌感染の場合は今回のように痰をともなうこともあります。痰は「病原体と戦った白血球の残骸」とも考えられ、「かぜ」が治る過程でみられる特に普通の経過であることも少なくありません。
 ただ注意が必要なのは。上気道において細菌の活動性が高まって「化膿性扁桃炎」となったり、ウイルス感染にひきつづいて下気道に細菌の二次感染がおこり「気管支炎」や「肺炎」となった場合です。このような状況で痰が増えてくる場合も往々にあり、治療として細菌をおさえる「抗生物質」も必要となります。痰以外の症状の経過によっても判断は異なりますので、ご不安であれば病院を受診することをお勧めいたします。


(2025年7月29日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2025年06月24日

Q「健康診断の胸部X線検査で「肺に影がある」と言われ・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 60代男性です。健康診断の胸部X線検査で「肺に影がある」と言われ、精密検査を受けることになりました。肺がんの可能性が高いのでしょうか?

A) 具体的にどのような「影」なのかにより疑われる疾患はさまざまです。例えば「腫瘤影」であれば「肺癌」が疑われますし、「結節影」「粒状影」であれば「肺結核」が疑われる場合もあります。他にも所見によっては「気管支拡張症」や「非結核性抗酸菌症」など、疑われる疾患は非常に多岐にわたります。「肺の影」が必ずしも「肺がん」とは限らないのです。
 たしかに肺がんの可能性もあるかとは思いますが、肺がん以外の疾患でも早期に治療しないと生活に支障がでたり、肺結核などの感染症の場合は家族など周囲の方に感染させてしまうリスクもあります。仮に肺がんだとしても早めに診断・治療していくことが重要です。肺がんは死亡率の高い癌であることは間違いないですが、検査機器の進歩により以前よりも早期に診断でき、治療薬の進化により奏功率も向上しています。ご不安かとは思いますが精密検査をうけてまずは確定診断することが第一歩です。診断結果に基づいて適切な診療方針を選択されるよう、担当医とよく相談することをお勧めいたします。


(2025年6月24日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2025年04月17日

Q「ぜんそくの治療のため、ステロイド薬を処方されました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) ぜんそくの治療のため、ステロイド薬を処方されました。副作用が心配なのですが、大丈夫でしょうか。

A) ぜんそく治療に処方されうるステロイド薬は「吸入」と「内服(のみ薬)」の二種類あります。
 まずは「吸入」ですが、これは治療の中心となる薬剤であり気管支拡張剤との配合薬が処方される場合も多いです。ステロイド薬は強い抗炎症作用をもつため、吸入することで直接気管支に作用して喘息の本態である炎症をおさえるのに大変有効で、できる限り用量を少なくできるというメリットもあります。全身的な副作用がおきることは通常ありませんが、口の中に付着したままだとカビが繁殖して「口腔カンジダ症」になったり、声がかれたりする事があります。この副作用については吸入方法の工夫や、吸入後にうがいをしっかりすることである程度回避できます。
 次に「内服」ですが、風邪等をきっかけに症状が悪化し、気管支拡張剤をしっかり使用しても効果が不十分な場合に処方されます。内服は血糖上昇、血圧上昇、胃炎等の副作用がおきる場合があり、長期に使用することで骨粗鬆症、免疫力低下等も引き起こされる可能性があります。ただ一時的に喘息増悪に対して処方する場合は数日程度のため、予想される副作用は胃炎程度と考えられています。ごく稀に喘息の病状が不安定なために長期間内服継続投与する場合もありますが、最近はステロイド以外の注射薬を選択し、できる限りステロイド薬を長期使用しないよう推奨されています。
 このように剤形や投与期間によって副作用もかわってきますので、主治医とよく相談の上ご理解いただければと思います。


(2025年4月17日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2025年03月28日

Q「瘦せ型でも脂質異常症になることは・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 健康診断で脂質異常症の可能性を指摘されました。瘦せ型でも脂質異常症になることはあるのですか。

A) 必ずしも肥満体型の方しか脂質異常症にならないわけではありません。脂質異常症のうち「家族性コレステロール血症」は遺伝性疾患であり、およそ300人に1人ほどの頻度でみられます。特に肥満でなくとも若い頃から動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが高値となり、若い年代から心筋梗塞を中心とした動脈硬化性疾患をおこすのが特徴です。遺伝性であることから血縁者も同様にコレステロールが高く、心筋梗塞や狭心症等の心臓病を発症する人が多くみられます。本来LDLコレステロールは肝臓で大部分処理されるのですが、この処理能力が遺伝的に低いため引き起こされる病気なのです。
 また遺伝でない場合でも極端な偏食があったりすると肥満でなくとも脂質異常症になる場合があります。例えば「糖質制限ダイエット」を行なっていてカロリー摂取を動物性タンパクのみに頼っている場合、結果的に飽和脂肪酸の過剰摂取に繋がり、LDLコレステロールが上昇することがあります。
 脂質異常症は心筋梗塞などの命に関わる疾患に繋がります。「痩せているし症状がないから大丈夫」とは考えず、病院を受診し、適切な治療をうけることをお勧めします。


(2025年3月28日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2025年02月27日

Q「肺NTM症という病気があると聞きましたが・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 肺NTM症という病気があると聞きましたが、どのような症状だと肺NTM症というのでしょうか。

A) 「NTM」というのは「非結核性抗酸菌」のことで、「肺NTM症」とは非結核性抗酸菌による肺感染症をさします。非結核性抗酸菌は結核菌と同じ抗酸菌の仲間ですが、その種類は多く180種類以上にのぼります。ただ肺NTM症の原因となる非結核性抗酸菌は「MAC(マック)菌」が90%以上を占めているため「肺MAC症」と呼ばれる場合も多いです。非結核性抗酸菌は水場や土壌に多く存在します。また肺結核と違い、肺NTM症は人から人にうつることはないと考えられています。また肺NTM症は中高年の女性で、特にガーデニングなど土いじりなどをすることが好きな人に多いことがわかっています。肺NTM症は肺結核と同様にながびく咳、痰、血痰、体重減少などの症状がでる場合もありますが、多くは無症状であり健康診断などで発見されることもよくあります。レントゲン所見としては気管支拡張所見、粒状影、結節影、空洞などがみられる場合があります。
 健康診断で指摘があっても「症状がないから」と受診しない方は案外多いものです。肺NTM症は気づかないうちにゆっくりと進行し、症状が出始めた頃にはかなり悪化している場合もありますので、健康診断で異常を指摘された方は早めに病院を受診することをお勧めいたします。


(2025年2月27日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2025年01月30日

Q「喫煙者よりも、喫煙者の周囲にいる人の方が・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 喫煙者よりも、喫煙者の周囲にいる人の方がたばこの影響を受けると聞いたのですが、本当ですか。

A) たばこの煙には「主流煙」と「副流煙」があります。主流煙とは喫煙者がたばこのフィルターを通して吸い込む煙で、副流煙とは、たばこの火のついた部分から立ちのぼる煙です。 煙の中には、ニコチン、タール、アンモニア、一酸化炭素等の有害物質が含まれており、これらは主流煙より副流煙の方が何倍も多いことがわかっています。喫煙者の周囲には副流煙にくわえて喫煙者から吐き出された主流煙の両方が存在することになります。ただ、どちらの煙も空気中に拡散されて濃度が低下しているため、直接主流煙を吸い込んでいる喫煙者に比べて、喫煙者の周囲の人のほうが多く健康被害をうけるとはいいきれません。
 自分は喫煙していないのに喫煙者の影響で周囲の煙を吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といいますが、夫が喫煙者の場合に妻の肺がんの発生リスクが高くなることや、親が喫煙者の家庭の子供の喘息発症率が高いことが知られており、いずれも受動喫煙によるものと考えられています。また喫煙者の髪の毛や衣服には有害物質が付着しており、その場で喫煙していなくても喫煙者と生活するだけで周囲の人は健康被害をうける可能性があるとも言われています。早く「たばこゼロ」の社会が実現できるといいですね。


(2025年1月28日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2024年12月18日

Q「マイコプラズマ肺炎が流行っているそうですが・・・」

教えてドクター2.jpgQ) マイコプラズマ肺炎が流行っているそうですが、予防や治療方法について教えてください。

A) マイコプラズマ肺炎は「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌によって引き起こされる肺炎です。小児や若年者の間で流行することが多く、5類感染症の一つであり、指定医療機関からの届出によると、およそ80%は14歳以下となっています。
 症状は、病初期は発熱、倦怠感、頭痛といったいわゆる風邪症状ですが、解熱した後も3〜4週間は咳が続くことが特徴です。また感染したら必ず肺炎になるわけではなく気管支炎程度である場合も少なくありませんが、それでも咳が長く続くことがあります。感染者の咳のしぶきを吸い込んだり(飛沫感染)接触したりすることで感染する(接触感染)ため、症状のある人と接しないようにすることが重要です。またマイコプラズマは発症まで2〜3週間と潜伏期間が長いのも特徴です。治療薬はマクロライド系の抗菌薬が第一選択ですが、最近は薬の効きにくい変異株も検出されており、キノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬が選択される場合もあります。
 咳がながく続き、感染力も高い感染症ですので、常日頃から体調を整えて流行時期には人ごみをさけ、うがい・手洗いなどの感染対策を行いましょう。


(2024年12月18日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2024年11月24日

Q「数週間軽いせきが出続けています・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 数週間軽いせきが出続けています。原因は何が考えられるでしょうか。また、どのような場合に病院を受診すべきでしょうか。

A) 「せき」の原因で最も頻度が高いのは風邪など「感染症」によるものですが、風邪で数週間咳が続くことはありません。風邪から肺炎になり咳が長引くことはありますが、通常咳以外の発熱・痰といった症状も伴うことが多いように思われます。感染症であれば「マイコプラズマ感染症」や「百日咳」といった「長引く咳」を特徴とする疾患の可能性はあります。
 ただし「咳」以外の感染症に特徴的な症状がない場合は、感染症以外の疾患も疑うべきです。比較的可能性の高いものに「気管支喘息」や「咳喘息」といったアレルギー疾患が考えられます。もともと花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のある方であればなおさらです。「喘息」というとヒューヒュー、ぜいぜいいうような「ぜんめい」や、息苦しくなるほどの症状をイメージされる方も多いですが、長引く軽い咳で診断されることも少なくありません。喫煙者であれば「COPD」などの喫煙に関連する疾患の可能性もゼロではありません。
 いずれにしても数週間咳が続いている時点で病院を受診すべきだと思います。病状が悪化する前に、早めに呼吸器専門医の受診をお勧めいたします。


(2024年11月24日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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