2025年02月27日

Q「肺NTM症という病気があると聞きましたが・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 肺NTM症という病気があると聞きましたが、どのような症状だと肺NTM症というのでしょうか。

A) 「NTM」というのは「非結核性抗酸菌」のことで、「肺NTM症」とは非結核性抗酸菌による肺感染症をさします。非結核性抗酸菌は結核菌と同じ抗酸菌の仲間ですが、その種類は多く180種類以上にのぼります。ただ肺NTM症の原因となる非結核性抗酸菌は「MAC(マック)菌」が90%以上を占めているため「肺MAC症」と呼ばれる場合も多いです。非結核性抗酸菌は水場や土壌に多く存在します。また肺結核と違い、肺NTM症は人から人にうつることはないと考えられています。また肺NTM症は中高年の女性で、特にガーデニングなど土いじりなどをすることが好きな人に多いことがわかっています。肺NTM症は肺結核と同様にながびく咳、痰、血痰、体重減少などの症状がでる場合もありますが、多くは無症状であり健康診断などで発見されることもよくあります。レントゲン所見としては気管支拡張所見、粒状影、結節影、空洞などがみられる場合があります。
 健康診断で指摘があっても「症状がないから」と受診しない方は案外多いものです。肺NTM症は気づかないうちにゆっくりと進行し、症状が出始めた頃にはかなり悪化している場合もありますので、健康診断で異常を指摘された方は早めに病院を受診することをお勧めいたします。


(2025年2月27日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2025年01月30日

Q「喫煙者よりも、喫煙者の周囲にいる人の方が・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 喫煙者よりも、喫煙者の周囲にいる人の方がたばこの影響を受けると聞いたのですが、本当ですか。

A) たばこの煙には「主流煙」と「副流煙」があります。主流煙とは喫煙者がたばこのフィルターを通して吸い込む煙で、副流煙とは、たばこの火のついた部分から立ちのぼる煙です。 煙の中には、ニコチン、タール、アンモニア、一酸化炭素等の有害物質が含まれており、これらは主流煙より副流煙の方が何倍も多いことがわかっています。喫煙者の周囲には副流煙にくわえて喫煙者から吐き出された主流煙の両方が存在することになります。ただ、どちらの煙も空気中に拡散されて濃度が低下しているため、直接主流煙を吸い込んでいる喫煙者に比べて、喫煙者の周囲の人のほうが多く健康被害をうけるとはいいきれません。
 自分は喫煙していないのに喫煙者の影響で周囲の煙を吸い込んでしまうことを「受動喫煙」といいますが、夫が喫煙者の場合に妻の肺がんの発生リスクが高くなることや、親が喫煙者の家庭の子供の喘息発症率が高いことが知られており、いずれも受動喫煙によるものと考えられています。また喫煙者の髪の毛や衣服には有害物質が付着しており、その場で喫煙していなくても喫煙者と生活するだけで周囲の人は健康被害をうける可能性があるとも言われています。早く「たばこゼロ」の社会が実現できるといいですね。


(2025年1月28日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2024年12月18日

Q「マイコプラズマ肺炎が流行っているそうですが・・・」

教えてドクター2.jpgQ) マイコプラズマ肺炎が流行っているそうですが、予防や治療方法について教えてください。

A) マイコプラズマ肺炎は「マイコプラズマ・ニューモニエ」という細菌によって引き起こされる肺炎です。小児や若年者の間で流行することが多く、5類感染症の一つであり、指定医療機関からの届出によると、およそ80%は14歳以下となっています。
 症状は、病初期は発熱、倦怠感、頭痛といったいわゆる風邪症状ですが、解熱した後も3〜4週間は咳が続くことが特徴です。また感染したら必ず肺炎になるわけではなく気管支炎程度である場合も少なくありませんが、それでも咳が長く続くことがあります。感染者の咳のしぶきを吸い込んだり(飛沫感染)接触したりすることで感染する(接触感染)ため、症状のある人と接しないようにすることが重要です。またマイコプラズマは発症まで2〜3週間と潜伏期間が長いのも特徴です。治療薬はマクロライド系の抗菌薬が第一選択ですが、最近は薬の効きにくい変異株も検出されており、キノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬が選択される場合もあります。
 咳がながく続き、感染力も高い感染症ですので、常日頃から体調を整えて流行時期には人ごみをさけ、うがい・手洗いなどの感染対策を行いましょう。


(2024年12月18日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2024年11月24日

Q「数週間軽いせきが出続けています・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 数週間軽いせきが出続けています。原因は何が考えられるでしょうか。また、どのような場合に病院を受診すべきでしょうか。

A) 「せき」の原因で最も頻度が高いのは風邪など「感染症」によるものですが、風邪で数週間咳が続くことはありません。風邪から肺炎になり咳が長引くことはありますが、通常咳以外の発熱・痰といった症状も伴うことが多いように思われます。感染症であれば「マイコプラズマ感染症」や「百日咳」といった「長引く咳」を特徴とする疾患の可能性はあります。
 ただし「咳」以外の感染症に特徴的な症状がない場合は、感染症以外の疾患も疑うべきです。比較的可能性の高いものに「気管支喘息」や「咳喘息」といったアレルギー疾患が考えられます。もともと花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患のある方であればなおさらです。「喘息」というとヒューヒュー、ぜいぜいいうような「ぜんめい」や、息苦しくなるほどの症状をイメージされる方も多いですが、長引く軽い咳で診断されることも少なくありません。喫煙者であれば「COPD」などの喫煙に関連する疾患の可能性もゼロではありません。
 いずれにしても数週間咳が続いている時点で病院を受診すべきだと思います。病状が悪化する前に、早めに呼吸器専門医の受診をお勧めいたします。


(2024年11月24日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2024年10月24日

Q「誤嚥性肺炎のリスクを減らすために・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 誤嚥性肺炎のリスクを減らすためにできることは何でしょうか。

A) 物をのみこむ働きを「嚥下」といいますが、何らかの理由により嚥下機能が障害され、本来入るはずのない食べ物や唾液・消化液が気管の中にはいってしまい、同時に細菌が気道内に入り起こる肺炎を「誤嚥性肺炎」といいます。嚥下機能は加齢と共に低下するため、高齢者は誤嚥性肺炎を発症するリスクが高くなります。また嚥下の障害がおきうる脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患のある方の場合は、誤嚥性肺炎のリスクがより高くなります。
 予防には、口をつきだしたり横にひいたり、顎をうごかしたり舌を動かすような、いわゆる「嚥下訓練」を日常的に行うのが一つです。また口腔内を常に清潔にたもち、食べ物の残りかすや細菌を除去する「口腔ケア」も有効であることが報告されています。またどうしても誤嚥をしてしまう方については食事をペースト状にしたりとろみをつけたりするというのも一つの方法です。
 また誤嚥しやすい方は誤嚥をしてもむせたりすることがない場合もあるため、痰が絡んだり、咳がふえたり急に発熱がみられたりする場合、誤嚥性肺炎の可能性があります。そのような時は、はやめに病院を受診することをお勧めいたします。


(2024年10月23日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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