2023年09月30日

Q「高齢者が肺炎で亡くなるニュースを時々みますが・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 高齢者が肺炎で亡くなるニュースを時々見ますが、肺炎はそんなに重病なのでしょうか。高齢の親がいるのですが、風邪なのか肺炎なのか、見分けがつくのでしょうか。

A) 肺炎だからといって必ずしも命に関わるような重篤な病状になるわけではありません。肺炎の原因は、細菌やウイルスなどの病原微生物の感染によって起きる肺の炎症です。重病になるかどうかは、原因である病原微生物の種類や、肺炎を罹患した方の健康状態に依存します。例えば細菌の「レジオネラ菌」や、2019年から流行した新型コロナウイルス「Covid-19」は重症の肺炎を起こすことが知られています。患者側の重症化する要因としては、一番に「免疫力」の低下が挙げられます。「白血病」や「エイズ」などの血液疾患や「糖尿病」は免疫力の低下をきたす代表的な疾患です。「慢性閉塞性肺疾患」や「間質性肺炎」などの呼吸器疾患の存在も肺炎を重病化させる要因になると言って良いでしょう。高齢者も重病化する可能性は高くなるわけですが、それは加齢に伴って内臓機能が低下していることや、複数の疾患を有している確率が高くなること等が理由として挙げられます。風邪か肺炎なのか症状のみで見分けるのは困難な場合もありますが、一般に肺炎は風邪に比べると症状がひどくなります。見分けるのも大事ではありますが、予防接種を受けたり「うがい」「手洗い」などの感染対策につとめ、体調管理をすることも重要ですね。


(2023年9月30日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2023年09月22日

Q「咳だけの症状が3週間ほど続いて・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 咳だけの症状が3週間ほど続いており、ほかの不調はありません。ただの風邪なのか、診てもらうべきか、どう判断すればいいでしょうか。

A) 通常「風邪」による症状で咳が3週間続くことは稀です。咳の原因となる疾患で最も多いのが風邪をはじめとする感染症ですが、「マイコプラズマ」や「百日咳」のような一部の感染症を除いて3週間以上咳が持続することはまずありません。また通常感染症の場合は咳以外の感染症に特徴的な全身症状、例えば発熱や倦怠感などを伴うことも多く、咳以外の気道症状、例えば咽頭痛や痰などもみられる場合も少なくありません。咳のみが3週間以上続いているのであれば、感染症以外の疾患をまずは疑うべきだと考えます。
 アレルギー疾患である「気管支喘息」や「咳喘息」は、症状に季節性がある、日中より夜間に多いなどの特徴がありますが、症状自体は「咳のみ」であることは少なくありません。また「逆流性食道炎」は胸焼けやゲップなどの症状を伴う場合もありますが、咳のみの症状で受診されて診断されることもあります。また高血圧の治療薬の一部に、副作用として咳の症状が出る場合があります。これら以外にも咳の症状のみがみられる疾患はいくつかあり、咳だけの症状と言っても放置しないほうが良いと考えますので、病院を受診することをお勧めいたします。


(2023年9月22日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2023年08月25日

Q「階段をのぼると息切れするのが気になって・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 階段をのぼると息切れするのが気になっています。病院に行った方がいいでしょうか?どんな病気が考えられますか?

A) まず「息切れ」がなぜ起きるのかを理解いただく必要があると思います。「息切れ」の起きる原因は酸素不足です。酸素は呼吸によって空気中から体内にとり込まれ、肺の肺胞で血液中に溶け込みます。血液中の酸素は赤血球のヘモグロビンによって全身に運ばれるわけですが、血液を全身に送るポンプの役割は心臓が担っています。この肺、ヘモグロビン、心臓、の3つのうちのどれかに問題が起きると酸素不足になり、息切れが起きる可能性があります。したがって慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎などの慢性進行性の呼吸器疾患の存在は息切れの原因になり得ます。また心臓弁膜症や心筋梗塞などの心疾患も慢性心不全を起こし、息切れの原因となり得ます。またヘモグロビンの減少はいわゆる貧血を指しますが、胃や大腸などに何らかの病気ができて起きる消化管出血は貧血の原因になりますし、白血病などの血液疾患も貧血を伴う場合があり、また女性の場合は子宮内膜症や子宮筋腫など婦人科系疾患の存在が、貧血につながる可能性があります。このように息切れの原因となり得る疾患は多種多様であり、息切れの症状のみでは原因となっている疾患を推定するのは困難です。息切れの程度にもよりますが、早めに病院を受診して精密検査を受けることをお勧めいたします。


(2023年8月25日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2023年07月14日

Q「夏型過敏性肺炎とは何ですか?」

教えてドクター2.jpgQ) 夏型過敏性肺炎とは何ですか?

A) 通常「肺炎」というと「細菌」や「ウイルス」などの病原体の感染によっておきる感染症をさしますが、「過敏性肺炎」は感染症ではなく「アレルギー」によって引き起こされる肺炎です。主な症状としては「咳」「発熱」「息切れ」などであり、症状のみでは感染症である肺炎と区別するのは困難です。有機物の粉塵や化学物質などの「抗原」を繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応が原因となりますが、通常は抗原を避けることで症状の改善が得られます。抗原の中で頻度の高いものに「カビ」が挙げられ、中でも「夏型過敏性肺炎」は「トリコスポロン」というカビに対してのアレルギー反応によるものです。
 トリコスポロンは住居内で繁殖するカビの一つで、高温多湿の環境を好み、エアコンの内部や浴室・布団などでよく繁殖することから、エアコンを使用する夏場に特に住居内を飛散して吸い込むことが多くなります。感染症である「肺炎」と診断され入院し、抗菌剤を投与されて改善し退院したものの、自宅に戻って症状が再燃してようやく「過敏性肺炎」と診断される場合もあります。この場合「抗菌剤」の投与で改善したのではなく、入院したことでカビのいる家庭から離れたことで一旦治ったと考えられます。予防のためには生活環境におけるカビの繁殖を防ぎ、エアコンのクリーニングや定期的な屋内の清掃や換気を行うことが有用と考えられています。ただし重症化や慢性化する場合もありますので、疑わしい症状がある場合は医師に相談することをお勧めいたします。


(2023年7月14日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2023年06月16日

Q「最近、食事中にむせてしまうことが多くなりました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 60代男性です。最近、食事中にむせてしまうことが多くなりました。病院に行った方がいいでしょうか?

A) 通常、人は口か鼻で呼吸していますが、ものを食べる時も口から食べています。息も食べ物も入口は同じ「口」なわけですが、喉の奥の部分で息の通り道である「気管」と食べ物の通り道である「食道」に別れており、特に意識しなくても食べ物は「気管」に入らずに「食道」に入るような構造になっています。「むせる」というのはこの構造が何らかの理由で破綻したために起きる現象で、本来何も固形物が入らない「気管」に食べ物が入ってしまうため咳き込んでしまうのです。また飲食物が「気管」に入る現象を医学用語では「誤嚥」と言います。誤嚥をきっかけに肺炎になること(誤嚥性肺炎)もありますので注意が必要です。
 「むせる」原因はさまざまで、脳梗塞などの脳血管障害に伴って嚥下機能が低下して起きる場合もあれば、「気管」と「食道」の分かれ道の部分にある「喉頭」にできた腫瘍などが原因で起きたり、声を出す役割の「声帯」を動かす「反回神経」が何らかの原因で麻痺することが原因となる等が挙げられます。また反回神経麻痺の原因も肺癌・大動脈瘤・神経疾患などさまざまです。このように「むせる」場合はさまざまな病気の可能性が考えられますので、病院に行かれたほうがいいですね。


(2023年6月16日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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