2022年05月18日

Q「70代の父が誤嚥性肺炎を繰り返し・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 70代の父が誤嚥性肺炎を繰り返し発症するようになりました。早めに発見してあげる方法や、予防法などあれば教えていただきたいです。

A) 人は食事をする際に、まず目で見たり匂いを嗅いだりして確認して、手を使って口に運び顎を動かして咀嚼し、唾液と混ぜながら食物を舌で喉の奥に運んで、「嚥下反射」という機能によって食道に運ばれます。この「嚥下反射」によって食物は気管に入らないように制御されているわけですが、このように食べ物を摂取する際には様々な機能が協調して成立してもいます。「誤嚥性肺炎」は食べ物が気管に誤って入ってしまうことにより起こる肺炎ですが、加齢とともに人は視覚・嗅覚は衰え、手の力や咬む力も衰えてきます。人によっては歯がなくなってきたりすることで咀嚼がうまくできなくなっている場合もあります。加えて「嚥下反射」も衰えてきますので、高齢者は「誤嚥性肺炎」のリスクはどんどん高くなってくるわけです。
 加齢によって起きてくる変化ですので、完全に防ぐことは困難ではありますが、予防には「口腔ケア」が重要と考えられています。「口腔ケア」とは歯ブラシなどで口腔内を清潔にして有害な細菌の活動を抑えることで、また口腔内を刺激することによる唾液分泌を活性化する効果もあります。「口腔ケア」以外にも顎・首・肩の体操やマッサージも有用と考えられています。早期発見はなかなか難しいですが、一緒に食事をして正しい姿勢で食事ができているか動作に何か問題はないか等、観察をするのも一つの方法かと思います。



(2022年5月18日 中日新聞なごや東版「教えて!ドクター Q&A」掲載)
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2022年04月23日

Q「 毎年春のこのくらいの時期になると・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 毎年春のこのくらいの時期になると、目のかゆみや、透明な鼻水がでたり、咳が止まらず困っていますが、花粉や黄砂などへのアレルギー症状なのでしょうか?

A) 「毎年同じ季節に症状がでる」というのは、アレルギー疾患を疑う第一の根拠になります。春のこのくらいの時期ですと「ヒノキ花粉」が最も疑わしいでしょうか。「目のかゆみ」「透明な鼻水」というのはいわゆる「花粉症」の代表的な症状ですので、おっしゃる症状からは「ヒノキ花粉」による「花粉症」が最も考えられます。ただご注意いただきたいのは「咳」の症状についてです。確かに「花粉症」でも咳が出ないとは言い切れませんが、「花粉症」の方のおよそ3割は「気管支喘息」が合併するとも言われており、咳の症状は「気管支喘息」によるものの可能性があります。「花粉症」の症状を契機に「気管支喘息」が悪化することは珍しいことではありません。
「花粉症」の治療が抗アレルギー剤の内服が中心になるのに対して、「気管支喘息」は吸入ステロイド薬・気管支拡張薬等の吸入が中心になり、治療方針が異なります。また「花粉症」と「気管支喘息」を合併している場合には、片方の治療のみしていては病状のコントロールができないことも多々あり、両方の治療を適切に並行して行うことでともに治療効果が発揮されます。確定診断および治療のため一度アレルギー専門医を受診することをお勧めいたします。



(2022年4月23日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2022年03月15日

Q「COPDの治療に「呼吸リハビリテーション」というのがあると・・・」

教えてドクター2.jpgQ) COPDの治療に「呼吸リハビリテーション」というのがあると耳にしましたが、どのような治療なのでしょうか?

A) 「リハビリテーション」というと腕の骨折をした後の筋力回復強化を目的とした「運動器リハビリテーション」や、脳梗塞後の麻痺の回復などを目的とした「脳血管疾患等リハビリテーション」を頭にうかべる方が多いように思います。「呼吸リハビリテーション」は「呼吸器に関連をした病気をもつ患者が、可能な限り疾患の進行を予防あるいは健康状態を回復・維持するため、医療者と協働的なパートナーシップのもとに疾患を自身で管理して、自立できるよう生涯にわたり継続していくための個別化された介入」と定義されています。
 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は呼吸器疾患の代表的な慢性疾患であり病状は慢性進行性で、運動負荷時の息苦しさをはじめとする呼吸器症状の他、下肢筋力の低下など運動機能の低下をきたす疾患です。COPDに対しては吸入薬を中心とした薬物治療以外に呼吸リハビリテーションを積極的に行っていくことが推奨されており、その構成要素には運動療法・セルフマネジメント教育・栄養療法・心理社会的サポートなどが含まれます。実施にあたっては医師・看護師ほか、理学療法士・呼吸療法士・栄養士、ソーシャルワーカーやケアマネージャーなど多職種が関わる事になります。積極的な呼吸リハビリテーションは身体活動性の低下を防ぎQOL(生活の質)の向上につながると考えられています。


(2022年3月15日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2022年01月25日

Q「COPDと喘息の合併症と呼ばれるACOとは・・・」

教えてドクター2.jpgQ) COPDと喘息の合併症と呼ばれるACOとはどのような病気ですか?

A) COPD(慢性閉塞性肺疾患)は主に喫煙が原因となって引き起こされる慢性呼吸器疾患であり、呼吸機能検査上気流閉塞を示すことを特徴とし、症状としては慢性な「咳」「痰」「息切れ」がみられますが無症状のまま経過することも少なくなく、症状が出てきたときにはかなり進行した状況である場合もあります。一方で気管支喘息は呼吸器系のアレルギー疾患の一つであり、気道の慢性炎症を本態とし、気道狭窄による喘鳴や呼吸困難、胸苦しさ・咳などの症状で特徴づけられる疾患です。COPDとの一番の違いは症状が良くなったり悪くなったりする「変動性がある」という点です。
「ACO」とはCOPDと喘息の両方の特徴を併せ持っている場合に「合併症」と判断され診断に至るわけですが、例えば「もともと喘息である方が喫煙を継続した結果COPDも発症」した場合や、「COPDである方が季節の変わり目などにアレルギー反応をきたして症状が変動性を持ってきた」場合などがまず疑われます。確定診断のためには胸部レントゲン・CT、呼吸機能検査、FeNO測定、血液検査等が必要です。通常「COPD」の治療には抗コリン剤・長時間作用性β刺激剤といった気管支拡張剤が使用されますが、「ACO」と判断された場合は喘息治療の中心となる吸入ステロイド剤も積極的に投与されます。また「ACO」は積極的な治療により「COPD」よりも良好な経過をたどるとされていますので、確定診断と適切な治療が重要と言えます。


(2022年1月25日 中日新聞なごや東版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2021年12月21日

Q「喘息の吸入器にいろいろな物が・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 喘息の吸入器にいろいろな物が出ていますがどう違うのでしょうか。

A) まず吸入器の「役割」という意味でいうと「コントローラー」と「レリーバー」に分けられます。「コントローラー」は症状の有無にかかわらず毎日使用して、症状をコントロールする、あるいは症状が出ないようにするものです。薬剤の成分でいうと「吸入ステロイド薬」「長時間作用性β2刺激薬」「抗コリン薬」が該当します。一方「レリーバー」は症状が出現した時に症状を抑えるために使用するもので、「短時間作用性β2刺激薬」が該当します。
 次に吸入器の「製剤」という意味でいうと「ドライパウダー」と「エアロゾル」に分けられます。「ドライパウダー」は粉末状の薬剤を自分で吸って気管支に入れる構造になっています。「エアロゾル」は小型のガスボンベのような形状になっており、手で押し込んで薬の入ったガスを噴霧して吸う構造になっています。
 「コントローラー」「レリーバー」それぞれに「ドライパウダー」と「エアロゾル」があります。また「コントローラー」には薬剤成分として3種類あるわけですが、単一薬剤のものもあれば二種類あるいは三種類を含む「配合剤」もあります。また当然ではありますが大人用と子供用、重症用と軽症用では含まれる薬剤の用量が異なります。
 医師は患者さんの年齢や重症度、吸気力など様々な観点からどの薬剤がいいのかを選択することになります。



(2021年12月21日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)
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