2023年04月18日

Q「3週間せきが止まらず病院に行ったところ、ぜんそくだと言われました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 40代女性です。3週間せきが止まらず病院に行ったところ、ぜんそくだといわれました。大人になってからもぜんそくになるのですか?

A) ぜんそくは幼児から高齢者にいたるまで全年齢層にみられる疾患です。これまでの調査からは、小児期にぜんそくを発症した患者のうち成人まで持ち越す可能性は30%程度とされており、逆にいうと小児ぜんそくは60%以上の確率で治癒する可能性があるという事になります。ただ治癒したと考えられた小児ぜんそく患者のうち30%弱が成人になってから再発すると言われています。一方で成人のぜんそく患者のうち、成人になって初めて症状が出現した成人発症のぜんそくは70〜80%と言われており、うち40〜60歳代の発症が60%以上とされています。
 「ぜんそくは子どもの病気」「大人でぜんそくの人は子どもの頃からぜんそく」と思ってみえる方が意外に多いですが、実は大人になってからぜんそくになることの方が多いのです。しかも小児のぜんそくと異なり、大人のぜんそくは現在の医療では治すことができないと考えられています。治療の目的も「治す」ことではなく「コントロールする」ことになりますが、適切な治療を受ける事により80%以上の確率で症状のないコントロールされた状態で維持することが可能と考えられています。重要なのは症状がなくなった後も「症状がでないように」治療を継続することと言われていますので、自己判断で中断することなくしっかり通院することをお勧めいたします。


(2023年4月18日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2023年03月22日

Q「COPDと診断されました。どのような治療を・・・」

教えてドクター2.jpgQ) COPDと診断されました。どのような治療をするのでしょうか?一生治らないのでしょうか?

A) COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコの煙を主とする有害物質を吸入暴露することで生じる肺の炎症性疾患です。喫煙習慣による生活習慣病ともいえ、気道(気管支)の炎症が慢性的に惹起され、肺構造の最小単位である肺胞の破壊が起きることによる気腫性変化も生じる疾患で、症状としては慢性的な「咳」や「痰」、運動時の「息切れ」などを特徴とします。ただ喫煙者の方は症状に慣れていることもあってか病状の進行に気づかないことも多く、診断されたときにはすでにかなり病状が進んでいることも少なくありません。一番の治療はなんといっても禁煙ですが、禁煙してもすでに構造破壊が起きている部分は元に戻らないため、残念ながら一生治ることはありません。治療としては抗コリン薬やβ2刺激薬などの気管支拡張剤の吸入が挙げられますが、COPDの方のおよそ3割は喘息を合併しているとも言われており、その場合には吸入ステロイド薬の併用も推奨されています。「治らない」ということもあって、治療の目的は「病気の進行を遅らせる」「現状を維持する」ということになりますが、治療薬の進歩により以前に比べると呼吸機能についてはかなり改善が見込めるようになりました。しかしながら適切な治療を継続しても病状が進行して「呼吸不全」に陥り「在宅酸素療法」や「在宅人工呼吸療法」が必要となる場合もあります。



(2023年3月22日 中日新聞近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2023年03月20日

Q「ぜんそくの持病があります。花粉が飛ぶ時期は・・・」

教えてドクター2.jpgQ) ぜんそくの持病があります。花粉が飛ぶ時期はぜんそくにも注意が必要と聞きましたが、どういうことでしょうか?

A) ぜんそくはアレルギー疾患の一つですが、アレルギー疾患の代表的なものの一つに「花粉症」もあげられます。「花粉症」はスギ・ヒノキなどの花粉に対して鼻・喉など上気道の粘膜や眼の結膜においてアレルギー反応を起こすことにより「鼻水」「くしゃみ」「目の痒み」といった症状が出現する疾患です。アレルギー疾患を有する方は複数のアレルギー疾患を持つことも少なくなく、ぜんそく患者さんのおよそ7割は「花粉症」があると言われています。
花粉症が鼻・喉といった「上気道」を反応の場とするのに対し、ぜんそくは気管支つまり「下気道」を反応の場とします。花粉は粒子が大きいため花粉そのものは下気道に到達しないと考えられていますが、上気道も下気道も同じ連続性のある気道ですので、上気道で反応が起きると下気道に影響が及び反応しやすい状況になると言われています。この考え方を「One way, one disease」といいます。したがってぜんそくの方で7割の方は花粉飛散時期には病状が不安定になりやすいと考えられています。ぜんそくの治療を受けていても花粉症に対しての治療・対策がきちんとできていないと、なかなかぜんそく症状がコントロールできない事も少なくありません。主治医とよく相談して花粉対策をしながらぜんそくの治療を継続していくことをお勧めいたします。


(2023年3月20日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2023年01月25日

Q「コロナウイルスに感染して1ヶ月、まだ咳だけ残ります・・・」

教えてドクター2.jpgQ) コロナウイルスに感染して1ヶ月、まだ咳だけ残ります。この咳でも他人にうつる可能性はありますか?仕事は行っていますが休暇に人に会っていいのかわからず、気持ちも落ち込み気味です。

A) 通常コロナウイルスに感染後1ヶ月経過して他者に感染させることはまずありませんが、咳が続いていると不安を感じられるとは思います。なぜ咳が残るかですが、症状としては感冒程度のものであったとしても、実際はコロナウイルスによる肺炎になっており結果として解熱後も構造破壊が残り、それに伴って気道症状が遷延している可能性があります。通常発熱外来では抗原検査やPCR検査を行なってもレントゲンなどの画像検査は実施されない事がほとんどであり、症状が軽いために肺炎とは診断されず、結果として咳が長引いてしまう可能性があるのです。
 他は、コロナウイルス感染症を契機として他の呼吸器疾患が顕在化している可能性です。もともと花粉症やアトピーなどのアレルギー素因がある方や小児喘息の治療歴のある方が、コロナウイルス感染を契機として気管支喘息を発症することは珍しくありません。また元々喫煙歴のある方の場合、COPD(慢性閉塞性肺疾患)が潜在しておりコロナウイルス感染を契機に気道症状が顕在化して咳が長引く場合もあります。これらの場合は気管支喘息、COPDとしての治療を行わないと咳はなかなか治まりません。
 いずれにしても一度呼吸器専門医を受診することをお勧めいたします。



(2023年1月25日 中日新聞近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)

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2022年12月07日

Q「毎年インフルエンザの予防接種を打つべきか迷います・・・」

教えてドクター2.jpgQ)毎年インフルエンザの予防接種を打つべきか迷います。ワクチンはやはり接種すべきですか?

A) まずインフルエンザの予防接種をする目的が何かを理解する必要があります。「個人」という意味でいうと、インフルエンザの予防接種は決して「感染を防ぐ」ものではありません。「感染しても発症を防ぐ」あるいは「発症しても重症化を防ぐ」という事が期待できる効果です。インフルエンザは若い健康な方が罹患すると比較的症状が軽くすむ場合もありますが、65歳以上の高齢者や心疾患・呼吸器疾患・糖尿病などの基礎疾患を有する方は重症化するリスクが高いと考えられており、予防接種はより推奨されるべき対象と言って良いでしょう。
 一方「集団」という意味で考えると「感染拡大を抑える」という効果もあります。インフルエンザは飛沫感染であり、原則「せき」や「くしゃみ」といった症状がある人から別の人に伝播していきます。症状が軽く抑えられれば、それだけ人から人に広がっていくのを阻止できる事になるのです。これは学校や会社などの集団生活を送る上で重要であり、インフルエンザの流行は学校や会社の機能停止につながり社会的経済的損失をうむと考えられるのです。
 このようにインフルエンザは「個人」の健康を守り「集団」としての営みを維持する意義があるものとお考えください。その上でご判断いただければと思います。



(2022年12月7日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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