2023年07月14日

Q「夏型過敏性肺炎とは何ですか?」

教えてドクター2.jpgQ) 夏型過敏性肺炎とは何ですか?

A) 通常「肺炎」というと「細菌」や「ウイルス」などの病原体の感染によっておきる感染症をさしますが、「過敏性肺炎」は感染症ではなく「アレルギー」によって引き起こされる肺炎です。主な症状としては「咳」「発熱」「息切れ」などであり、症状のみでは感染症である肺炎と区別するのは困難です。有機物の粉塵や化学物質などの「抗原」を繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応が原因となりますが、通常は抗原を避けることで症状の改善が得られます。抗原の中で頻度の高いものに「カビ」が挙げられ、中でも「夏型過敏性肺炎」は「トリコスポロン」というカビに対してのアレルギー反応によるものです。
 トリコスポロンは住居内で繁殖するカビの一つで、高温多湿の環境を好み、エアコンの内部や浴室・布団などでよく繁殖することから、エアコンを使用する夏場に特に住居内を飛散して吸い込むことが多くなります。感染症である「肺炎」と診断され入院し、抗菌剤を投与されて改善し退院したものの、自宅に戻って症状が再燃してようやく「過敏性肺炎」と診断される場合もあります。この場合「抗菌剤」の投与で改善したのではなく、入院したことでカビのいる家庭から離れたことで一旦治ったと考えられます。予防のためには生活環境におけるカビの繁殖を防ぎ、エアコンのクリーニングや定期的な屋内の清掃や換気を行うことが有用と考えられています。ただし重症化や慢性化する場合もありますので、疑わしい症状がある場合は医師に相談することをお勧めいたします。


(2023年7月14日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2023年06月16日

Q「最近、食事中にむせてしまうことが多くなりました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 60代男性です。最近、食事中にむせてしまうことが多くなりました。病院に行った方がいいでしょうか?

A) 通常、人は口か鼻で呼吸していますが、ものを食べる時も口から食べています。息も食べ物も入口は同じ「口」なわけですが、喉の奥の部分で息の通り道である「気管」と食べ物の通り道である「食道」に別れており、特に意識しなくても食べ物は「気管」に入らずに「食道」に入るような構造になっています。「むせる」というのはこの構造が何らかの理由で破綻したために起きる現象で、本来何も固形物が入らない「気管」に食べ物が入ってしまうため咳き込んでしまうのです。また飲食物が「気管」に入る現象を医学用語では「誤嚥」と言います。誤嚥をきっかけに肺炎になること(誤嚥性肺炎)もありますので注意が必要です。
 「むせる」原因はさまざまで、脳梗塞などの脳血管障害に伴って嚥下機能が低下して起きる場合もあれば、「気管」と「食道」の分かれ道の部分にある「喉頭」にできた腫瘍などが原因で起きたり、声を出す役割の「声帯」を動かす「反回神経」が何らかの原因で麻痺することが原因となる等が挙げられます。また反回神経麻痺の原因も肺癌・大動脈瘤・神経疾患などさまざまです。このように「むせる」場合はさまざまな病気の可能性が考えられますので、病院に行かれたほうがいいですね。


(2023年6月16日 市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2023年05月16日

Q「息切れで受診したところCOPDと診断され、喘息も合併していると・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 息切れで受診したところCOPDと診断され、喘息も合併していると言われました。喘息を合併していると普通のCOPDとはどう違うのでしょうか?

A) COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコの煙を主とする有害物質を吸入暴露することで生じる肺の炎症性疾患です。喫煙によって気道(気管支)の炎症が慢性的に惹起され、肺構造の最小単位である肺胞の破壊が起きることによる気腫性変化も生じる疾患で、症状としては慢性的な「咳」や「痰」、運動時の「息切れ」などを特徴とします。一方で喘息は気道の慢性炎症によって「咳」や「ヒューヒュー」「ぜいぜい」といった喘鳴を生じうる、アレルギー性の呼吸器疾患です。一般的にCOPDの方のおよそ3割は喘息を合併するといわれ、もともと小児喘息の治療をしたことがあって大人になってから喫煙をされている方や、喫煙者で花粉症やアトピー性皮膚炎などアレルギーの素因がある方は、「喘息合併COPD(ACO)」の可能性があります。症状のみで喘息合併かどうか判別するのは困難ですが、喘息合併の場合は季節による症状の変動がみられる場合もあります。治療薬としては抗コリン薬やβ2刺激薬などの気管支拡張剤の吸入が挙げられますが、喘息を合併している場合には吸入ステロイド薬の併用が推奨されています。またCOPDは年齢とともに徐々に呼吸機能が低下していくことが知られていますが、喘息合併の場合は吸入ステロイド薬を含む適切な治療を行うことで、通常のCOPDよりも呼吸器機能が改善する可能性があるといわれています。今後しっかりと通院治療されることをお勧めいたします。


(2023年5月16日 近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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2023年04月18日

Q「3週間せきが止まらず病院に行ったところ、ぜんそくだと言われました・・・」

教えてドクター2.jpgQ) 40代女性です。3週間せきが止まらず病院に行ったところ、ぜんそくだといわれました。大人になってからもぜんそくになるのですか?

A) ぜんそくは幼児から高齢者にいたるまで全年齢層にみられる疾患です。これまでの調査からは、小児期にぜんそくを発症した患者のうち成人まで持ち越す可能性は30%程度とされており、逆にいうと小児ぜんそくは60%以上の確率で治癒する可能性があるという事になります。ただ治癒したと考えられた小児ぜんそく患者のうち30%弱が成人になってから再発すると言われています。一方で成人のぜんそく患者のうち、成人になって初めて症状が出現した成人発症のぜんそくは70〜80%と言われており、うち40〜60歳代の発症が60%以上とされています。
 「ぜんそくは子どもの病気」「大人でぜんそくの人は子どもの頃からぜんそく」と思ってみえる方が意外に多いですが、実は大人になってからぜんそくになることの方が多いのです。しかも小児のぜんそくと異なり、大人のぜんそくは現在の医療では治すことができないと考えられています。治療の目的も「治す」ことではなく「コントロールする」ことになりますが、適切な治療を受ける事により80%以上の確率で症状のないコントロールされた状態で維持することが可能と考えられています。重要なのは症状がなくなった後も「症状がでないように」治療を継続することと言われていますので、自己判断で中断することなくしっかり通院することをお勧めいたします。


(2023年4月18日 中日新聞市民版「教えて!ドクター Q&A」掲載)



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2023年03月22日

Q「COPDと診断されました。どのような治療を・・・」

教えてドクター2.jpgQ) COPDと診断されました。どのような治療をするのでしょうか?一生治らないのでしょうか?

A) COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコの煙を主とする有害物質を吸入暴露することで生じる肺の炎症性疾患です。喫煙習慣による生活習慣病ともいえ、気道(気管支)の炎症が慢性的に惹起され、肺構造の最小単位である肺胞の破壊が起きることによる気腫性変化も生じる疾患で、症状としては慢性的な「咳」や「痰」、運動時の「息切れ」などを特徴とします。ただ喫煙者の方は症状に慣れていることもあってか病状の進行に気づかないことも多く、診断されたときにはすでにかなり病状が進んでいることも少なくありません。一番の治療はなんといっても禁煙ですが、禁煙してもすでに構造破壊が起きている部分は元に戻らないため、残念ながら一生治ることはありません。治療としては抗コリン薬やβ2刺激薬などの気管支拡張剤の吸入が挙げられますが、COPDの方のおよそ3割は喘息を合併しているとも言われており、その場合には吸入ステロイド薬の併用も推奨されています。「治らない」ということもあって、治療の目的は「病気の進行を遅らせる」「現状を維持する」ということになりますが、治療薬の進歩により以前に比べると呼吸機能についてはかなり改善が見込めるようになりました。しかしながら適切な治療を継続しても病状が進行して「呼吸不全」に陥り「在宅酸素療法」や「在宅人工呼吸療法」が必要となる場合もあります。



(2023年3月22日 中日新聞近郊通し版「教えて!ドクター Q&A」掲載)


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